藤井聡,適菜収『デモクラシーの毒』新潮社

 難波駅前に到着したときから感じていた、むせかえるような悪のニオイが、すでに限界を超えていた。腐臭と死臭が襲い掛かってくる。
「新しい大阪府政をつくる」という言葉が、頭の中でぐるぐると回る。
 これまでの人生で一番穢いもの、おぞましいものを見た。
 橋下が算盤をはじき、どこに向けて何を語ろうとしているかが、明確に分かった。
 私は耐え切れなくなり、後方に退却し、高島屋のショーウィンドウのガラスに寄りかかった。
 スピーチが終わり、橋下と松井はワゴン車に戻り、維新の会のテーマ曲を流しながら、去っていった。
 周辺でビラを撒いている維新の会のスタッフには悪意は感じられない。若い男女、中年の男女、きちんとした身なりの老人のスタッフもいる。
 彼らは本気で橋下が大阪をよくすると思っているのかもしれない。だからこそ、怖い。
 私は足元をすくわれるような恐怖を感じた。人間という存在はこれほど簡単に崩壊するものなのだと。
(5頁「はじめに」適菜収)

リアルだ。
非常にリアリティがある。