田崎史郎『安倍官邸の正体』講談社現代新書 2014年12月20日発行

 恥を忍んで記すと、私は衆院解散・総選挙の時期について、年内解散の可能性はゼロに近いと考え、2016年夏の参院選との同日選が本命と読んでいた。14年9月の内閣改造・党役員人事でも、谷垣を幹事長に起用するとはまったく予想していなかった。
 安倍晋三首相や菅義偉官房長官は私の読みを超えて動いた。安倍首相、菅官房長官と話す機会があるにもかかわらず、読み誤った。
 これはひとえに、私の取材力が不足し、読みが浅く、かつ思い込みが強かったせいである。今、私は読み誤った悔しさと、安倍、菅両氏が私の想像を超えて動いたことに敬意を抱いている。そして、次は負けない、少なくとも負けないように取材し、政局を読む力を養おうと決意している。
 そういう反省と覚悟をもって、これから安倍政権の「正体」に迫りたい。安倍政権を評価するにしても、批判するにしても、まず実態を知らなければならないというのが私のささやかな信念である。
(19頁。序章「政局を読む力」を養うために)

官僚と敵対するのではなく、また、官僚に操られるのでもなく、官僚を使いこなすことを、安倍は官邸で学んだ。今、官邸にいる国会議員で官邸勤務が最も長いのは安倍自身である。(62頁)

官僚の体質を知っていたからだろう、安倍は再就任早々、霞が関を震撼させた。人事権を行使したのである。新聞にはベタ記事にしかならなかった。それでも、官僚は異例の人事に畏怖した。(63頁)

「人事は官邸が決める」――。このメッセージを内閣発足から一ヶ月もたたないうちに霞が関に発信した。その後も、菅が主宰する官邸の「人事検討会議」で各省が提示した人事案を次々と覆した(64頁)

「官僚を利用するが、官僚に利用されない」
 これを鉄則にして、人事をテコに霞が関官僚を動かしていく。これが、第二次安倍政権の官僚支配の手法だ。各省幹部の人事権を掌握することによって、予算編成や主要な政策決定においても主導権を握ることができるようになった。まさに「人事は万事」である。(65頁)

 この本を読んで、安倍首相に寄りすぎている、批判が足りないと思われる方が多いかもしれない。しかし、それでも権力構造を解明し、伝えることがわれわれの最大の使命であるという私の確信は揺るがない。目の前で起こったことの真相を分かりやすく伝えていく――。それがもっとも大事で、批判するにも肯定するにも、まず真相を知ろうというのが本書の意図である。真実を知らないで、気軽に批判する気持ちにはなれない。
(246頁。おわりに)

やっとる。
間違いなく、やっとる。
首相Aさんが、やっとる。
森友学園問題では、首相Aの関与を、はっきりさせないといけない。
忖度とか、アキエとか、そういうレベルではなく、すばり大物Aさんの直接的・間接的な関与が、強く疑われる。
たとえ鬼の居ぬ間に、忖度だけで勝手に国有地払い下げがなされたとしても、そこに強制忖度があったのか、あるいはビジネス忖度だったのか、忖度ひとつとっても、謎が多い。